記念講演:「日本と台湾の絆 特別なパートナー関係」
日台稲門会の岩永会長並びにご出席の皆様、本日の記念講演会に講師としてお招き頂きましたこと、誠に光栄でございます。時間が経つのは早いもので、2007年1月に私が副代表に着任してから、もう5年が経過致しました。日頃公私とも、貴会の皆様にはお世話になっており、心からお礼申し上げる次第です。本来ならば、当代表処の沈斯淳代表が皆様にご挨拶、そして講演をさせて頂くべきかと思いますが、着任間もない為、私がピンチヒッターをさせて頂く次第です。
2008年、馬英九総統が着任し、台日両国は特別なパートナー関係であると宣言しました。そして、翌年の2009年を経済、文化、観光、青少年、地方などの交流を強化する台日パートナーシップ促進年と定め、様々な交流を促進してまいりました。台日双方が4年間努力を続けた結果、断交後40年で最も良好な台日関係が築き上げられました。今後も引き続き台日パートナーシップに基づいて、日米と自由、民主主義、人権などの価値観を共有し、アジア地域の安定と繁栄を続けて推進していきたいと思います。日本からも引き続き、応援・協力をお願いします。貴会におかれましては、常日頃から日台の交流に協力して頂いて大変感謝しており、心からお礼申し上げる次第です。
私は元来、米国留学を志していましたが、父親が日本であれば安心と勧めたので、台湾で日本語の勉強をした後に日本へ留学し、明治大学大学院の正規研究生となりました。昭和53年1月13日に羽田空港に降り立ち、それからしばらく練馬の知り合いの家にお世話になりました。到着の翌朝、外を見ると辺りは一面の銀世界で、初めて見る雪には本当に感動しました。来日まもない頃、日本語が下手な私に対しても日本の人々は親切にしてくれました。銀座で道に迷ってしまったとき、お店の店員さんに道を訪ねたところ、自分の仕事を放って200mほど先のところまで道案内をしてくれました。その時の店員さんの親切は今でも忘れられません。私はいま個人的な経験をお話しましたが、私のようなケースは珍しいことではありません。台日関係は、政府だけでなく、個人レベルでも非常に緊密なのです。私は日本とご縁があって、台湾で外交部に入って外交官になってからは、台湾と日本を行き来する生活を続けています。
蒋介石政権の時代、当時の日本の田中角栄首相は1972年に中華人民共和国と外交関係を樹立し、日本と台湾は断交しました。日中国交正常化に伴って、日本と台湾は正式国交こそなくなりましたが、経済や文化面での実質外交に重点を置き、台湾側は亜東関係協会、日本側は交流協会という民間機構を設立してそれぞれ政府の窓口の役目を果たしています。
李登輝元総統の時代には、台湾と日本の交流が更に活発になり、また司馬遼太郎の「台湾紀行」も発表されました。1990年9月の台湾中部大震災(921震災)では、翌日11時には当時の小渕首相が応援の意志表示を行い、4時間後にはレスキュー隊を派遣、迅速な対応に台湾の人々は心から感謝の念を抱きました。
その後、1999年には石原慎太郎・東京都知事が知事として初めて訪台しました。それをきっかけに知事、地方議会が続々訪台するようになり、2003年には森喜朗・元首相が首相経験者として初めて訪台しました。それを皮切りに、これまでに麻生太郎、安倍晋三、海部俊樹元首相らが次々と訪台するようになりました。また、2005年には日台双方がノービザで3カ月滞在可能となり、2007年には台湾新幹線も開業し、自動車運転免許の相互承認が可能となるなど日本と台湾の絆は更に深まってきました。
2008年に馬英九総統が就任すると、「統一せず、独立せず、武力行使せず」の原則で、台湾は中国との関係改善政策へと舵を取り、ECFA(両岸経済協力枠組協議)を締結。それにより、日本企業が中国大陸に進出する際、台湾企業と手を組んでスムーズに中国大陸及びアジアの市場開発が出来るようになりました。また、台湾と日米の関係は更に発展し、友日・親米・和中の政治スタンスとなりました。さらに、政府としては国際経済の中に台湾を組み入れるべく、日本とのFTA(自由貿易協定)締結、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参加を近い将来実現させるべく努力しているところです。また、馬総統は日本との関係強化にも力を入れ、台湾駐日代表処の札幌分処開設や、台日のワーキングホリデー協定、投資協定、航空自由化協定の締結などの進展がみられました。2010年には東京羽田―台北松山便も就航し、空の足が格段に便利になりました。
最近では、2011年の東日本大震災への台湾からの支援により、台日双方の好感度が高まっています。世論調査によると、台湾人の一番好きな国は日本であり、日本人の84%が台湾に対して身近感があるという調査結果が出ています。また、今年4月に行われた天皇陛下主催・春の園遊会には、馮寄台前駐日代表が台湾代表として初めて招待され、天皇陛下から感謝のお言葉を掛けて頂きました。
このように、近年の台日関係は大変良好な状態あり、今年5月の馬英九総統の二期目の就任挨拶でも台日関係が言及されました。台日が今後更なる交流強化を進め、引き続き協力してアジアの発展に尽力していきたいと願っています。