平成27年度春季基調講演会 及び交流の集い 開催報告

PIC1

当会主催の春季基調講演会及び交流の集いが、3月12日(土曜日)午後4時から、早稲田キャンパス22号館で開催されました。先ず講演会では一般財団法人台湾協会理事の高寛氏を講師にお招きし、「経済的視座よりの両岸関係、日台関係の展望」と題する講演が行なわれました。高講師は、台湾三井物産董事長、香港三井物産・ベトナム三井物産取締役を歴任された後、現在は日台関係促進のため種々経済団体、経済研究所、大学等で講演などのボランティア活動をされています。

今回の講演会はこれまでとは趣向を変え、先ず講師にテーマについてお話をして頂き、その後聴衆と講師、あるいは聴衆同士でそのテーマについて意見交換を行う、という形をとり、また講演会名は基調講演会としました。

以下講演内容抜粋:

1月16日投票の台湾総統及び立法委員選挙は、国民党の壊滅的大敗、民進党の大勝に終った。第三勢力・時代力量の台頭、また中国、米国や資本家の介入がなかったことが2012年と異なる。だが安泰ではない。台湾企業はITなど中国へ過度に依存しており、この従来型ビジネスモデルは限界に来ている。蔡英文新政権としては「(経済原動力再生の)3本の矢(イノベーションによるグローバル競争力の強化、内需産業の強化、地元経済の発展を重視)」、及び「(産業発展に対する)3つの重点(未来産業、永続的なグリーン産業、生活産業)」、並びに「5つのイノベーション研究開発計画(グリーンエネルギー科学産業、アジアシリコンバレー産業、スマート機器革新産業、国防産業の振興、バイオ医薬R&D産業)」を経済政策として掲げたが、結果が今後の最重要要素となるだろう。また国際経済貿易戦略としてTPP、FTAへの参画を目指し、東南アジア諸国との協力関係を推進する(新南向政策)としている。一方中国は誰も定義出来ない「社会主義的市場経済」下にあるが、経済成長の逓減に伴いさまざまな課題が露呈しており、習近平は経済の質の向上のため一帯一路、AIIBなど成長モデルの新たな段階への転換政策を図っている(新常態)。台湾・中国の両岸関係であるが、中国にとり、「92年合意」の確認が大前提としても台湾の重要性は新政権になっても変わらない。台湾にとっても両岸経済貿易拡大は必要であり、台中FTAのECFAの交渉を推進し、中国の変革に伴った新たなBIZ MODELを模索せざるを得ない。さて、冷戦終結後の世界の潮流はグローバル化である。IT革命により国際分業体制がさらに明確化・深化している。世界の経済的結びつきは、政治の安全保障と共に今後重大要素となる。

○グローバル化によってもたらされる国際分業の深化

Group1群国 R&D、先端技術、SOFTに特化 日欧米

Group2群国 良い商品を安価に製造する生産(改良)技術に長ける (中)台韓

Group3群国 労働集約的生産地域 中、東南・西南アジア、アフリカ

日本としては中国の変革を見据え、日―台―中に米国を加えた制度的プラットホームを構築し、台湾との戦略的国際分業を深化するべきである。

また、台湾企業鴻海精密工業によるシャープの買収目的は、ブランド力の取得にある。

 

引き続き、意見交換に入りましたが、講演内容とはやや離れ、台湾の教育問題について興味深い討論がありました。台湾では1997年に中学校教科書「認識台湾(地理篇、歴史篇、社会篇)」が刊行・採用され、それまで歴史といえば「中国本土」を指していたのですが、「郷土史」として初めて台湾についても学ぶことができるようになりました。これにより台湾アイデンティティーが覚醒し今回の選挙結果の遠因になった、という意見もありました。その後「認識台湾」は廃止され、歴史教育は社会科の中に組み込まれたので、今の留学生は別の教科書で学んでいます。なお講演会には会員17名、会友5名、一般8名、学生4名、計34名(講師を除く)が参加しました。

講演後は老舗・金城庵に会場を移動しての懇親会。会員16名、会友4名、一般6名、学生4名、計30名(講師を除く)が参加し、時を忘れて懇談され、盛会の裡に終了しました。

(齋藤 晃 記)

―講師Profile―

高寛(たか ゆたか) 昭和26年生 昭和49年横浜国立大学経営学部卒業 昭和49年三井物産(株)入社、主に金属資源、非鉄製品分野を担当 米国サンフランシスコ、ニューヨーク本店副社長を経て 平成17年鉄鋼原料・非鉄金属副本部長 平成18年理事、台湾三井物産董事長 三井物産中国経営評議会、香港三井物産取締役、ベトナム三井物産取締役を兼務 平成21年退職 平成21―23年MIODシニア・アドバイザー

現在;一般財団法人台湾協会理事、社団法人アジア太平洋フォーラム理事、新日華フォーラム理事、新外交フォーラム評議委員、台日産業技術合作促進会(TJCIT)顧問、ふるさとテレビ顧問、独立行政法人中小企業基盤整備機構国際化支援アドバイザー