平成23年新春講演会を開催しました

平成23年新春講演会を2月5日土曜日、早稲田キャンパス22号館5階502教室で開催しました。

今回はNHK解説委員の林純一氏をお招きし、「転換期の東アジアと台湾の行方」と題してご講演頂きました。

林氏は長年にわたり東アジアをフィールドにご活躍されている国際ジャーナリストで、NHK台北支局長として台湾を取材された経験もお持ちです。

講演は、「米中関係の現状をどう見るか」、「米中のせめぎ合いの中の台湾」をテーマとし、東アジアにおいて中国が軍事力や経済力を背景に「東アジアの盟主」と言う地位を手にすることになるのか、アメリカが日本を始めとする同盟国との連携で影響力・指導力を維持するのかを熱く、そして冷徹に語られました。カギを握るのが台湾なのです。

「米中関係の現状をどう見るか」では、昨年行われたオバマ大統領と胡錦濤国家主席との米中首脳会談の本来の目的、中国の経済発展が途上国の民主主義に齎す影響、民族意識の高揚が原因と思われる国際社会との中国の協調性欠如、それに対応した米の対中姿勢の転換を説明し、中国の東アジアにおける野望とアメリカの戦略、そして日本の取るべき方向を解き明かされました。

「米中のせめぎ合いの中の台湾」では、中国にとっての、そしてアメリカにとっての台湾の意味を背景に、中国の台湾統一戦略を、馬英九政権の対中戦略や台湾民衆の考えを紹介しつつ、米中のバランスの中で解説されました。

台湾の国際的地位は様々な立場で様々な意見のある問題ですが、林氏はこれを中国の立場、米の立場、中国国民党の立場、民進党の立場、そして日本の立場それぞれに分けて手際よく説明されました。要は「カイロ宣言」と「サンフランシスコ講和条約」の解釈ですが、49カ国が署名したサンフランシスコ講和条約によることが「国際的に解決されるべき」筋道で、台湾問題は第二次大戦の戦後処理の問題である、と喝破されました。

最後が2012年総統選挙の意味ですが、これは「一つの中国」の立場に立つ国民党と「一つの中国」を否定する民進党の戦いとし、いずれにせよ、選挙の結果は最終的に米中の力関係に影響を及ぼすことになると締めくくられました。

講演後の質疑応答では会員・会友始め岩永会長が講師を務められる早稲田大学オープン教育センターの台湾講座生、ホームページでこの講演会を知り登録された方々からの質問が相次ぎましたが、NHK解説委員で鍛えた林氏の放送通りの歯切れ良い受け答えは流石で、政府首脳の国会答弁とは次元が格段に違うという感がありました。

当日は会員・会友に加え、口コミやホームページ登録者等が多数参加されました。なお抄録を5月発行の会報に掲載します。

最後に、公演終了まで受付に座っていてくれた阪根幹事、寒い中ご苦労様でした。

———– 林 純一氏プロフィール ————————————————————————————-

・1949年生まれ ・72年 上智大学卒業、NHK入局 ・83年より報道局国際部記者 ・93-96年 香港支局長

・98年-2002年 台北支局長 ・02-09年 解説委員室 解説主幹 ・09年 定年退職 以後 専門解説委員としてNHK勤務

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熱演中の林氏

熱心に聴講する会員